

Neo Kudan (2016)
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件とUMAを融合した架空の怪物を描いた。件(くだん)とは災害時や戦時中などの非常事態に目撃情報が相次ぐ都市伝説的な存在である。特徴として、人面と牛の身体を持つ、またはその逆パターンである半人半獣である。不思議なことに信憑性に欠ける巷の都市伝説とやや異なり、20世紀以降も自衛隊や警備会社の業務報告で証言記録が残っていたりと、UMAの毛色が強い存在である。江戸時代にはすでに凶兆を予言する妖怪として、幕末になると牛から生まれる奇形種として広く知られた。混乱の最中の目撃である為、幻覚という可能性は捨てきれないが、目撃談のある東日本大震災時の記録映像には押し寄せる津波から異常なスピードで逃げる得体の知れない物体が確かに映っており、この類の全てが幻覚で説明できるとは限らない。私個人としては、件という存在は集団的無意識によって呼び起こされる幻影なのでは無いかと思っている。人間自体が人智を超越した存在によって作られたとする説に乗っとれば、その副産物としての件のような怪物と日本人の間で遥か昔に接点があったのかも知れない。なお、木原浩勝氏所有の剥製などは見世物として利用されていた奇形牛と思われる。また、遺伝子実験によって人間のクローンを生み出すことが可能なこの現代においても、犠牲となった奇形のような動物たち(そのいくつかはUMAかもしれない)が数多くいたことは想像に容易い。人間が神の領域へ手を伸ばす時、その手から大きな影を落とすかもしれない。そしてそれは新たな件として人々に警鐘を鳴らすのである。
Mediums: graphite on paper
Mac, photoshop
Print size: 21.0cm x 29.7cm (A4)
29.7cm x 42.0cm (A3)

