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Envoy From Moon (2017)

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ウサギは古来から豊穣や月を象徴し、それらの象徴は神話の女神たちが持つ性質と共通している。実際に数々の神話や伝承では、ウサギは女神に付き随う存在である。つまりウサギは女神のメッセンジャーであると言える。冗談めかした作品ではあるが、そのようなウサギの特徴を浅く散りばめている。まず豊穣とは子孫の繁栄に直結する。ウサギは繁殖力に優れ、時に雄は雌の周りを走るだけで射精に至り、雌はなんと過剰受胎が可能な動物である。バニーガールや某ポルノ雑誌のマスコットがウサギたる所以でもある。だから作品の片方がイヤラシイ目つきをしているのは性の喜びを表現しているのだ。一方、インドの伝説ではウサギは帝釈天により月へ登る存在であり、これが中国へ伝わると仙女嫦娥に不死を与え彼女を月へ逃すに至った薬草を作るウサギになる。日本人が持つ“月で餅を作るウサギ”のイメージの由縁とされる。この中国のウサギは女神西王母の随獣である。また、脚部に描いた波模様は江戸時代に流行った波兎の模様にインスパイアされている。波兎は民謡『竹生島』の一節に端を発しているが、そのウサギもまた月に住んでいるのである。そしてそんな波模様に三位一体のシンボルを取り入れた。昔ウサギが両性具有と考えられていたことから処女懐胎と関連づけられ、聖母マリアや幼いキリストと共に描かれた。そこから教会のシンボルとなる三羽のウサギの三位一体が誕生したのである。

作品の白いウサギに関しては、唐突であるが雌ウサギとエイリアンがモチーフである。上記の月に関連したウサギと古事記に登場する因幡の素兎を考察した上で、この動物に比喩された存在がリトルグレイタイプのエイリアンであったと妄想が広がったためである。

Mediums: acrylic on paper

Dimensions: cm x cm x cm

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